善悪の彼岸

社会人5年目、ものづくりと哲学と研究が好き

森博嗣の「作家の収支」を読んで、仕事について考えた。

森博嗣さんは「すべてがFになる」や「スカイ・クロラ」で知られる小説家で、私もスカイ・クロラは読んでいる(妻が森博嗣のファンで、いいから百年シリーズを読めとせっつかれている)。

森博嗣さんの小説ももちろん面白いのだが、小説以外で生活や仕事について書いてる本が面白く、この「作家の収支」もそういう本で、森博嗣がデビューしてから今までどのくらい小説でお金を稼いだかが赤裸々に語られている。「小説家って実際いくら稼いでるの?」なんて一番気になるところで、面白くないわけがない。

 

 

 

詳細は本を読んでほしいが、大体どのくらい稼いでいるかというと、デビュー作にして一番のヒット作である「すべてがFになる」で6000万円らしい(アニメ化、実写化で得たお金も含めて)。森さんは大体1時間に6000字の文字を入力することができ、執筆に30時間+校正等で30時間で計60時間、この小説に必要だったと言っている。時給100万円である。凄まじいコスパだ。夢がある。(ちなみに私も1時間で何文字ブログを書けるか試してみたら1700文字だった。今のところ1円にもなってない(^o^))

デビューから、年間20冊もの本をコンスタントに出し続け、大量のお金を稼ぎまくっていく森さんの様が、本人の口から淡々と語られるのが最高に面白い。

しかし、この記事では文中で語られる森さんの仕事に対するスタンスや考えで心に残ったことを紹介していきたいと思う。

顧客よりもビジネスパートナーを儲けさせるのが大事

この本を読んでいると、森博嗣さんが小説を書き、出版することに対して、顧客(読者)と同等かそれ以上にビジネスパートナー(出版社)を大事にしているということがわかる。

作家としては、増刷は不労所得だと書いたが、それ以上に、「出版社に損をさせなかった」とほっとするのが増刷、ともいえる。なにしろ、これだけ稼がせてもらっているのは、出版社のおかげである。僕は特にそれを強く感じている。

森博嗣. 作家の収支 (幻冬舎新書) (p.39). 株式会社 幻冬舎. Kindle 版.

小説家業において、出版を管理してくれる出版社は、一番のビジネスパートナーである。自分が売れない小説を書けば、自分のお金が入らないのはもちろん出版社も損をする。

したがって、なんとか彼らのビジネスにとって利益が生じるようにしたい、という気持ちが働く。一方、不謹慎な物言いになるかもしれないが、読者に対しては、さほど責任を感じない。読者は僕の本を読んでつまらなければ、ほかにいくらでも選択肢がある。面白くない本に当たっても、本1冊分の出費が損になるだけだからだ。

森博嗣. 作家の収支 (幻冬舎新書) (p.39). 株式会社 幻冬舎. Kindle 版.

確かに、言っていることは納得できるが、ここまで読者に対してドライな考えを持てるのはすごい。普通なら「いかに読者に対して面白いと思ってもらえるか?」が一番大事です!とか言いそうなのに。消費者側には選択肢があるが、ビジネスパートナーとは一蓮托生なので、ビジネスパートナーに優先して応えたいということなんだろうか。「お客様は神様」とは程遠い考えである。面白い。

これだけドライに構えてられるからこそ、売上に一喜一憂せずにコンスタントに作品を発表できるということなのかもしれない。

多作であることが一番重要

森さんは、多作の重要性について文中で何度も触れている。

最も大事なことは、多作であること、そして〆切に遅れないこと。1年に1作とか、そんな悠長な創作をしていては、たとえ1作当たっても、すぐに忘れ去られてしまうだろう。

森博嗣. 作家の収支 (幻冬舎新書) (p.55). 株式会社 幻冬舎. Kindle 版.

長く売れ続けるためには?という章でも以下のように言っている。

デビュー作の『F』が20年にわたってコンスタントに売れているのは、この作品が特に面白いからというわけではなく、森博嗣が次々に本を出したからだ。新しい作品を常に世に送り出していれば、いつも新作が書店にあるし、広告などに名前も登場する。そして、どうせなら1作目から読もうという人も出てくる。新作を読んでみたが、今一つよくわからない、ならばよく聞く題名のものをもう1作読んでみるか、と思うかもしれない。

森博嗣. 作家の収支 (幻冬舎新書) (p.67). 株式会社 幻冬舎. Kindle 版.

とにかく作品をコンスタントに出し続けて、常に新しい情報が市場にあるようにしておく。それらがどこかのタイミングでクローズアップされてヒット作に繋がる(かもしれない)ということだと読み取った。

コンスタントに出し続けるためにも、あまり他人からの評価を気にせず、マイペースにだが確実に執筆を続けていくことが多作のコツなのかもしれない。

自分においても、ちょっとブログの閲覧数が増えると満足してしまって、次を書かなくなる、逆に少ない閲覧数だとやる気が起きず放置してしまう、ということがよくある。仕事においても、褒められすぎても褒められなさすぎても自分のペースが乱れて仕事の質が落ちてしまう。

坂口恭平さんの「継続するコツ」にも書かれていたが、とにかく書き続けること、他人から評価を真に受けすぎず、仕事し続けることが一番大事だとわかる。

「好きなことを仕事にする」は幻想

スランプに陥らないためには?という章で森さんは以下のように述べている。

「好きだから」という理由で書いている人は、好きでなくなったときにスランプになる。「自慢できる」仕事だと思っている人は、批判を受けるとやる気がなくなる。つまり、そういった感情的な動機だけに支えられていると、感情によって書けなくなることがある、ということのようだ。それに比べれば、仕事で書いている限り、スランプはない。書けば書いた分だけ稼ぐことができる。人の心は人を裏切るが、金は裏切らない、ということか。守銭奴のような物言いになるけれど、これは正直なところである。仕事という行為は、例外なく守銭奴になることだ。

森博嗣. 作家の収支 (幻冬舎新書) (pp.145-146). 株式会社 幻冬舎. Kindle 版.

仕事に対して思い入れが強すぎるとうまくいかなかったときにスランプに陥る。そのためにも金を稼ぐための仕事と割り切ったほうがうまくいくということのようである。

私自身、最近フリーランスエンジニアとして仕事してみて思ったんだけど、「やっててそこまで嫌じゃない」くらいがちょうどいいのかもしれないと思っっている。日によってはうまくいかずキツイときもあるけどおしなべて言えばそこまで嫌ではない。まあ続けられるかもと思う。仕事にするならこれくらいの温度感がいいのだろう。

 

超面白かった

仕事に対して考えさせられるいい本だった。

最初の方にも書いたが、デビューしてからどれくらい本が売れて、それによってどれだけ儲けられたかという部分もめちゃくちゃおもしろいので是非買ってみてください。お金欲しい(^o^)

 

では