善悪の彼岸

ノリと勢いでフランスに来たエンジニアが個人開発や好きな哲学、フランス生活について書くブログ。

パリの満員電車で見た面白い光景

今日の朝、語学学校に期末の口頭テストを受けるためにメトロに乗ったんだが、ちょっと面白い光景を見たので共有したい。

 

東京と同じようにパリでも普通に満員電車はあり、今日私が乗った1番線(ルーブル美術館とか通る一番混んでる路線)は満員に近い状態だった。日本でもそうだが、電車が混んでいる場合は、リュックサックを前に持つことがマナーである。(ちなみにフランスのメトロには電車の扉付近に折り畳み椅子が4つついているのだが、混んできたら座席を立って椅子を畳んでおくというマナーもある。知らずにこの前マダムに怒られた。)

 

私もリュックを前に掛けて満員状態を耐えていた。既に8割乗車くらいだったのだが次の駅でも容赦なく人が入ってくる。

 

すると、入ってくる人に押されて、190cmくらいのドレッドヘアーの黒人男性が背負っていたリュックが、扉付近に立っていた近くのマダムの顔にぶつかってしまったのである。ぶつけられたマダムは「Putain!(英語でFU〇Kの意味)」と小声で文句を言っている。

 

日本でもまぁよくある光景だと思うがここからが凄かった。

 

まず、この光景を見た別のマダム二人が「混んでるときは、リュックを前に持ちなさいよ!後ろの女性に当たってるわよ」と黒人男性に文句を言った(たぶん)。これに対して、「すいません、マダム。子供を抱えているのでリュックを前に掛けられないんです」と男性。この男性、子供二人と一緒に電車に乗っていたのである。6歳くらいの女の子は前に抱えられ、同じく6歳くらいの男の子が近くに立っている。「それじゃあ仕方ないわね」とマダム。

 

子供が小さいと大変だな〜的な空気が流れ話は終わったかのように見えた。しかしリュックを顔に当てられたマダムが動き出したのである。

 

リュックぶつけられたマダムは、近くの座席に座ってた大学生くらいの女の子に話しかけ、「ちょっと子供連れの人が困ってるから座席開けてくれない?」と頼んだ。女子大生は即座に席を立ち、マダムはそこに黒人男性と娘を座らせた。続いて、さっき男性に文句を言ったマダム二人が二人分の席を何とか詰めてスペースを空け、残った男の子を座席に座らせた。これで万事解決である。

 

黒人男性を注意したマダム二人はまぁわかるが、被害者であるマダムが率先して問題解決に動いたのに驚いた。たぶん私だったら「混んでるときはリュック前に抱えろや、マジクソ」とXに投稿して終わりだったと思う。

 

なんというか、自分が嫌なことはその場で相手と交渉して解決する、みたいなフランス文化を感じた一幕であった。日本だと何か相手に不満があっても調和を重んじてその場では言わず、あとでSNSなり鉄道会社に文句言って終わりということになりそうだが、その場で文句を言ってさっさと解決しちゃうのがフランス流である。

 

フランス人はこういう「その場の状況に合わせて自分で判断してパっと動く」みたいなのが得意な人が多いように見える。なのでマネジメント側もそこに頼って、原則だけ決めてあとは現場の判断に任せるよ~みたいな丸投げである。

 

まぁそのおかげで現場の判断でいきなり道路が封鎖されたり、バスが勝手に運行停止になったりするわけだが・・・。