最近、トランプ政権の再始動でアメリカは大騒ぎだが、トランプ氏による所信表明の場において、冷静に話を聞くトランプの息子の隣で子供のようにはしゃぎまくるイーロンマスクの動画が話題になっていた。
大統領就任式で見せたイーロンマスク(53歳)とバロン・トランプ君(18歳)の精神年齢が逆すぎて面白いpic.twitter.com/v8ZDHEo8W9
— 海外の万国反応記 (@all_nations2) January 20, 2025
そんな彼は自身がアスペルガー症候群であることを公表している。
アメリカではイーロンのようなアスペルガー傾向を持つ起業家が非常に活躍しているが、 その理由について最近読んでいる「ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか」という本に書かれていたので、 序盤の内容も含めてお伝えしたい。
この本は、 イーロンマスク等と一緒にペイパルを創業したピーター・ティールさんが、 自身の起業経験や、エンジェル投資家として多くの起業家を見てきた中で、どうしたら成功するスタートアップを作れるか?ということについて書かれた本である。
世界一の競争社会に身を投じて得てわかったこと
それはわかりきったことなのに、僕たちはそれを無視するように刷り込まれる。アメリカの教育システムは競争への強迫観念を反映しているし、それを煽っている。学生の競争力を成績ではっきりと評価し、最も成績のいい生徒はステータスと信任を得る。個人の才能や志向に関係なく、全員に同じ教科を同じように教える。
作者は自分がハーバート大学に飛び級して入学し、そこでも優秀な成績を収めた後、スタンフォードロースクールに進学し、アメリカで数十人しかなれない最高裁の法務事務官になったものの最後の競争に負けて、出世競争を降りたらしい。その経験から、そのような多くのライバルがいる競争に、価値を見出すということ自体がイデオロギーの一つであり、ビジネスにおいてこのような競争に参加することは無駄なことであると言っている。
もし最高裁の法務事務官になっていたら、おそらく証言を録音したり他人の事業案件の草案を書いたりして一生を過ごしていただろう。新しい何かを創り出すことはなかったはずだ。どれほど違っていたかはなんとも言えないけれど、その機会損失は莫大なものになっていただろう。
日本でもそうだが、成功への道筋みたいなものが大きく引かれていて、大学を卒業していい企業に入って一生過ごすというのが安牌の道だとされている。大勢がそれを目的に競争をすることによって、多くの挫折者を生み出し、「自分は競争に負けた人間だ」と思い込んで、無意に生きてしまうということが起きている気がする。 世間一般として「自分の人生をデザインする」という意識が浸透して、やりたい道を作っていくということが普通になれば、 より面白いものがこの世に出てくる可能性も高まるんじゃないかなと思った。
競争を避けろ
クリエイティブな独占環境では、社会に役立つ新製品が開発され、クリエイターに持続的な利益がもたらされる。競争環境では、誰も得をせず、たいした差別化も生まれず、みんなが生き残りに苦しむことになる。
基本的には競争社会ではすべてが激しい競争の中に、数年において消えていく状態にあるので、 新しい何かが生み出されたりする余地や余裕はない。 対して独占企業が1つだけある状態では、その企業がより長期的な視点をもって様々なものを開発することができる。すなわち独占状態がイノベーションを起こす環境であるといっているのである。その過程で多くのイノベーションが生まれると言っている。
ビジネス素人の私からすると、市場に数多くのライバルがいることが善で、そのライバルをいかに蹴落とすか?差別化するか?が大事なのではと思っていたのでこの視点は新鮮だった。あくまで競争するのでなく、あまり注目されていない小さな市場を独占することから始めて、徐々に拡大するのがよいらしい。
競争状態にあると、確かにコストや細かな差異でお互いが戦うことになる。 そうすると誰かが独占企業となるまで潰し合うことになるので、 確かに改善されたプロダクトはできるのだが、大きなイノベーションは起きづらくなる。 そういう競争に身を投じるよりは、誰も目をつけていない市場を探し出して、 そこを独占するのが大事だということらしい。
夢中になることで、他人と違うことができる
今日のシリコンバレーで、人付き合いの極端に苦手なアスペルガー気味の人間が有利に見えるのは、ひとつにこうした模倣競争が不毛だからだろう。空気を読めない人間は、周囲の人と同じことをしようとは思わない。ものづくりやプログラミングの好きな人は、ひとり淡々とそれに熱中し、卓越した技能を自然に身につける。そのスキルを使う時、普通の人と違ってあまり自分の信念を曲げることもない。だから、わかりやすい成功につられて周囲の大勢との競争に捕らわれることもない。
さて、冒頭で言ったアスペ傾向を持っている人たちが大きな成功を収めている理由を分析している文章が上記である。 市場の競争を分析して、その中から自分が作るものを決めるというよりかは、 ものづくりやプログラミング自体に熱中して誰の言うことも聞かなかった結果、今までに存在しないような技術やプロダクトができ、それが独占市場を生むということらしい。 Googleの創業者であるラリー・ペイジが「夢が非現実的であればあるほど、競争者がいなくなる。」と言っていたが、結局はバカでかいビジョンを持って、そこに向けてひたすらものを作るということが大事なのかもしれないと思った。