フランスに来てから色んな博物館や観光地を見て、色んな国の歴史について興味が湧いてきた。また、ニュースを見ていても、ウクライナ戦争やトランプの関税戦争など、それぞれの国の思惑がどこにあるか、各国のリーダーはどういう事を考えているのか?みたいな話題が非常に多く、そういう知識を一般教養として身につけておく必要性を感じていた。当たり前だが、現在の政治家の判断は過去の歴史を基にジャッジを下しているはずで、そういう国同士の思惑の上での世界の動きみたいなものを勉強するのにあたり、何が適切なのかな~と思っていたところ、地政学という学問を知り、一冊本を読んでみたところちょっと見える世界が変わった気がしたので共有。
読んだのはこの本。
ラジオの「文化放送 オトナカレッジ」という番組の中で放送された「茂木誠の世界史学科」を再構成した本らしい。日韓関係やヨーロッパの移民問題など現在世界で起きている様々な問題について、世界史に詳しい茂木さんとアナウンサーの砂山さんが対話形式で、地政学の観点から考えるという構成になっている。地政学について初心者の砂山さんに分かるように茂木さんが説明するという形になっているので非常に読みやすかった。また、Kindle Unilimitedで読めるのも良い。
地政学では世界史を「善と悪の戦い」ではなく「国同士の縄張り争い」と考える
学校の歴史の教科書では、基本的に日本視点で世界が語られ、日本にとって敵か味方か、その国の行動は正義か悪か?で語られることが多いが地政学では違うらしい。
各国、ただ生存競争を続けているだけ。それを地図で見ればいい。お隣同士は仲が悪い。正義とか悪とか、そういう話ではない。単なるリアリズムで見る。そうすればプーチンさんや、習近平さんの行動もわかってくる、ということでした。
地政学を一言でいうと、国際紛争を「国と国の縄張り争い」と考える学問らしい。各国は常に自国の領土を守り、できれば拡張していきたいという思惑があり、その上に行動を正当化する論理がある。なので基本的に隣の国とは仲が悪い。しかし、大国が領土拡大を目論んで攻めてくると、連帯して一時的に関係が良くなる、等、あくまで国同士の生存競争として国際関係を見る学問のようである。なので基本的に「善い」国はいない。国と国の間には利害関係が存在するだけである。
ニュースや教科書、哲学では、「こういう悪いことをあの国がやっている」とか「こういう振る舞いが善で、逆は悪である」というような善悪で語ることが多いので、現実が分かりづらくなる事があるが、実際問題として世界を国取りゲームだとみなすと、それぞれの国の思惑や動きが見えてくるということらしい。面白い。
でもちょっと単純化しすぎ?
あらゆる国際問題について、ざっくばらんに触れられているので本の中身は省略するが、ちょっと国と国の関係を単純化しすぎている感じもした。後から振り返ってみれば、「この戦争は宗教対立が原因だった」とか「資源争いが原因だった」とか言えるかもしれんが後付けで当てはめているに過ぎず、 それが事実なのかというのは正直わからない。あくまで解釈であると感じた。 なので、本に書いてあることを盲目的に信じるのではなく、 他の本を参照するとか、自分で他の国に行ってみて、その国の考え方を確かめるとか、そういうようなことが必要であると思った。一方で、大雑把にこの国にはこういう特性があるということを知っておき、各国の次の動きをシミュレーションして 国全体として有事に備えるということは非常に意味があることだと思うのでそういう意味で有用であると感じた。
まとめ
哲学とか民主主義の根幹そのものについて考えを深める、 人間とはどうあるべきかと考える、みたいな本はよく読むのだが、そういうものとは一つ距離を置いて、性悪説的に、そもそもすべての国は多くの領土を取りたいという人間欲望を前提に置くというのは面白い考え方だった。
ただ、こういう合理だけの考えのもとでウクライナにいきなり攻撃しに行ったロシアは、世界中から非難されているわけである。アメリカも自身の利益だけを考えた相互関税で目下炎上中だし、国と国の利害関係だけで世界を考えるのは合理的かもしれないけど、長期的な視点で見ればデメリットも多く、国際平和は成り立たないのかなという感じもあった。 逆に各国は仲良くすべきみたいな、理想像だけ掲げていても、虎視眈々とチャンスを狙っている国に隙を与えてしまうことに繋がるので、 理想論を念頭に置きながらも、 プラクティカルに利害関係も擦り合わせていくというようなムーブが国には求められているんじゃないかと思った。