善悪の彼岸

ノリと勢いでフランスに来たエンジニアが個人開発や好きな哲学、フランス生活について書くブログ。週2更新。

好きなことは続けるうちに好きになる。GWに読みたい創作者ブログ①~アニメーション監督、今敏さんのブログ~

最近はフランスも暑くなってきており、日中にランニングするのがしんどくなってきている。しかもフランスのアパートは基本的に冷房がついていないので、日中の部屋はすでに暑く、夏を越せるか少し心配である。(クーラーがないからかフランスの扇風機はやけにパワフルで弱でも爆風である。)

 

さて、私は色んな創作者(ミュージシャンや映画監督、ソフトウェア開発者など)が書いた文章を読むのが好きである。特に彼らが若い頃や多くの作品を発表していた時期に書いた文章には、作品を作った背景や仕事のスタンスなど多くの学びが隠されていると思う。というわけで、今日はGWに読みたいオススメの創作者ブログということで私が好きな今敏監督のブログを紹介していく。何個か紹介したいブログがあるのでまず第一弾ということで。

 

アニメーション監督、今敏さんのブログ

konstone.s-kon.netja.wikipedia.org

 

今敏監督といえば妄想代理人やパプリカなどのアニメ作品が有名で、海外からの評価も高い日本を代表するアニメ監督の一人である。恥ずかしながら高校生の頃にパプリカを見て、なんか難解なアニメだなぁと思って以来、見たことがなかった。しかし、最近デビュー作の「パーフェクトブルー」を見たところ超面白かった。現実と虚構が入り交じる複雑かつ巧みな構成と、最後のどんでん返しが素晴らしい。(ナタリー・ポートマン主演の「ブラックスワン」は今作に影響されて作った作品らしい)Netflixで見れるのでぜひ。

 

パーフェクトブルー以降も続々とアニメを発表されていた今敏監督だが、2010年、46歳の時に亡くなっている。このKON'S TONEは今監督が亡くなる直前まで書いていたブログである。

 

私は以下の作品を作り続けることについて書いた記事が好きである。

https://konstone.s-kon.net/modules/notebook/archives/56

最初に持っている「好きなこと」というのは、およそ借り物であったり、あまりに脆弱なものであったりすることが多く、それをまず吐き出し、裏返った自分の虚ろを見据えつつ、それでもさらに続けて行くうちに生じてくる「気」のようなものこそが、純度の高い表現の欲求である。らしい。多分。私はそうだった。強固な「好きなこと」というのは試行錯誤の末に生じてくるのである。

 

今監督によれば、自分が「好きなこと」というのは曖昧なものであり、それを形にしていく上で強固になっていくという。またその発表の場としてインターネットが適していると言っている。

 

先程「続けて行くうちに生じてくる“気”」と書いたが、「気」を生じさせるためには継続される時間が必要なわけで、ホームページという素人と玄人に区別のない広大な公共の場はその格好の舞台だと思われるのである。自慢のコンテンツをネットに上げることによって、結果惨敗することもあろうし、快感を得ることもあろう。ともかくもそこで客の目を意識することで客観性も生まれるであろうし、自分のやりたいことや好きなこととやらが明確になったり、より強固になる。これを娑婆で同じように実践するとなると、おいそれと素人が参加できる余地はあまりに少ないはずである。私のホームページ礼賛は基本的にそこら辺にある。

 

とても共感できる考えだと思った。私もブログを書いているが、書き始めた頃よりも今の方がブログを書くのが好きになった。無理矢理にでも続けているうちに勝手に好きになっていくし、更に何を書くのが好きか?自分はどういう人間か?ということが明らかになっていくという感じがする。

 

もう一つ、パーフェクトブルーができるまでの制作工程を記した「パーフェクトブルー戦記」も面白い。

konstone.s-kon.net

アニメーション監督となる前、漫画家をしていた今監督にオファーが来て、悪戦苦闘しながら作品を作り続けていく様子が津々浦々に語られている。しかし、改めてデビュー作がパーフェクトブルーとは凄い。。。才能ありすぎである。

 

ちなみに闘病中、最後に読者に向けて書いた今監督が書かれたブログが以下である。

http://konstone.s-kon.net/modules/notebook/archives/565

 

ブログ全体として、俺はこう思う!こういう作品を作りたい!という意思に溢れていて、しかもめちゃくちゃ文章がうまい。相当博識な方だったんだろうなと思う。もし今もご存命であったなら更にたくさんの名作たちを生み出していただろう。本当に惜しい人を亡くしたと思う。