前回に引き続きフランス理系大学院の受験記です。
フランス大学院受験の仕組みと日程
フランスの大学院を受験するにあたっては、日本から応募するのか、フランスから応募するのか?でかなりプロセスが異なる。私は去年の9月に渡仏してきていたのでここで説明するのはフランス在住の日本人がフランス大学院に応募する方法である。日本から応募する場合は、前年10月から応募開始らしい。以下のかなさんの記事が詳しい。
フランスでは既に修士を持っている場合、M2から編入することができる。もちろんM1から入学するよりも学費は安くなるし、修士号ももらえるのでお得(?)である。博士に行きたい人がM2から行きたい大学の修士に潜り込んで博士に行きやすくするというのもよくある話らしい。また補足情報として、日本の学部を卒業している場合、フランスのM2に編入できるらしい。以下のNikkoriさんのNoteに記載があった。
厄介なことにM2に応募するのとM1に応募するのではこれまたプロセスが異なる。
①M1に応募する場合
フランス在住の日本人が大学院にM1から応募する場合は、前回の記事でも紹介したMon masterというプラットフォーム上で行う。
2025年度の日程は以下の通りだった。
- 2月25日から3月24日まで Mon masterから各大学に応募
- 6月2日 Mon master上で結果発表
ご覧の通り応募期間は1ヶ月しかない。その間に推薦書や成績証明書、卒業証明書、モチベーションレターや履歴書等全ての書類を集めて提出する必要があるのでなかなか鬼畜である。Xで調べるとフランス人の学生にとってもかなりキツイらしい。
②M2に応募する場合
M2編入に応募する場合は各大学のプラットフォームから応募する。日程は各大学の各コースによって違うが、だいたいM1に応募するよりも日程が緩い気がする。以下、2025年度のパリ・サクレー大学のHCIコースのM2編入の場合
- 3月1日から4月30日まで パリ・サクレー大学のプラットフォームから応募
- 応募から2ヶ月以内に連絡
書類準備
M1入学もM2入学もあまり必要な書類は変わらない。以下、代表的なものを紹介
モチベーションレター
A4用紙に1~2枚で志望理由を書く書類。受験が終わって思うが、恐らく一番大事な書類。というのもフランス理解大学院では書類選考後に面接を行うところが少なく(私は3校中0だった。同じように理系院出願で、6校中1校だったという方を知っている)、志望理由や自身のバックグラウンドを伝える資料が推薦書とモチベーションレターしかない。また、これは他のブログなどでも指摘されているが、フランスの大学院受験においては、それまでの経験と進学したいコースの一貫性がとても求められていると感じる。すなわち、自分は何に興味があるのか?そして今まで何をやってきたのか?何故そのコースに進みたいのか?なぜフランスなのか?ということをモチベーションレター内で納得性のある形で表現することが大切である。私の場合は、前職で製造装置のUI設計を行っていたので、人種や文化によらず使いやすいUI設計をするために、人種のるつぼであるフランスで一からUXデザインについて学びたい的なことを書いた。あとは、Maker Faireに出した作品をポートフォリオサイトの作品解説のURL付きで載せて実装力をアピールした。ここらへんの内容が刺さってUTCに受かったんじゃないかと思う。また、UTCに関しては一からモチベーションレターを書いたのだが、IP Parisとパリ・サクレー大学に関しては大部分を転用してしまった。今考えると、ちゃんとIP Parisやパリサクレー向けにそれぞれの大学で学べると自分との繋がりをしっかり考えたにモチベーションレターを書くべきだったと反省している。
モチベーションレターを書き終わったら、可能であれば大学や大学院を卒業しているフランス人に見てもらったほうがいいと思う。私は、妻に見せただけで提出してしまったのだが、妻がフランス人の友達に自分のモチベーションレターをレビューしてもらっており、返ってきた内容が非常にレベルが高く驚いた。やはりバカロレアを経て大学まで進んでいるフランス人の文章力は非常に高く、表現もかなり日本人と違った使い方をするので、そのようなフランス人たちと戦うためにも一度現地の方にレビューしてもらうことをオススメする。
以下、私が参考にした記事。
履歴書(CV)
履歴書は英語orフランス語で書く必要がある。私はフランス語のコースにも英語のコースにも英語の履歴書を添付した。Wordでもなんでもいいと思うが、私はOfficeに金をかけたくなかったので、WebでLaTeXで書類を作成できるOverleafというプラットフォームでCVを書いた。CV用の無料テンプレートがかなり充実しているためオススメである。結構英語で履歴書を書くのは時間がかかるので早めに手を付けたほうがいいと思う。私は1ヶ月くらいかかった。
成績証明書
成績証明書は高校卒業以降に通った全ての学校の証明書を提出する必要がある。私は全ての大学で英語の成績証明書を送付したが、フランス語のコースに応募する場合は、フランス語に翻訳したほうがベターという話もある。で、ここからがGPAが低い人には朗報なのだが、フランスの成績は一年を前期と後期に分けて、それぞれ20点満点で表すというのが普通である。日本の成績からフランスの成績に換算するとかなり成績の見た目がよくなったりする。私は以下のサイトを参考に換算した。
卒業証明書
成績証明書と同様に、高校卒業以降に通った全ての学校の卒業証明書が必要となる。私は成績証明書しか日本から持ってきてなかったので、親に取り寄せてもらう等手間がかかった。私は全てのコースで英語の卒業証明書を出した。
語学スコア
語学スコアは恐らく誰もが一番苦労するポイントだと思う。私の場合はパリ・サクレー大学が以下のような基準だったので、IELTS:6.0を目指した。TOEICでも受けられたが、他の大学にアプライすることを考えてIELTSの勉強をしていたためIELTSで受けた。
(Our HCI master is taught in English. You must provide proof of English language proficiency. IELTS: Overall score >= 6.0. TOEFL: Overall score >= 90. TOEIC >= 785 Some waivers: having completed a higher education degree instructed in English.)
私は3回受けていて以下のような結果だった
2023年 3月 L:6.0 R:6.0 W:5.5 S:4.5 Overall 5.5
2024年 8月 L:5.0 R:6.0 W:5.5 S:5.0 Overall 5.5
2025年 3月 L:6.0 R:7.0 W:5.5 S:4.5 Overall 6.0
割とライティングの対策してたんだけど全く伸びなくてワロタ。スピーキングもひどいものである。ただIELTSの場合、スピーキングはその時の面接官との相性もあるのでかなり伸びにくいのではないかと思う。伸びのコスパがいいのはリーディングとリスニングだと思う。以下でオススメのリーディングとリスニングの勉強を書いているのでもしよければ。
大学によっては、HPに求められる語学レベルは書いてあるが、DELFやIELTSのような語学テストの結果が必要なのか分からない書き方がされている場合もあると思う。そうではなく、明確に証明書が必要と書かれている場合でも一度大学に確認するのをオススメする。私が受験したUTCでは、DELF A2が必要とHPに書かれていたが、担当者に連絡したところ、実際は何も提出する必要がないと言われた(それでも不安だったため、DELF A2の受験票とA1の語学学校の成績証明書を送ったが)。また、応募時点で必要なスコアがなくても、テストの受験票を提出するだけでなんとかなった等の体験談もネットに散見される。少しでもわからないことや、「こういう場合はどうなんだろう?」と疑問に思うことがある場合は、大学に問い合わせるのがいいと思う。直接聞くと、案外なんとかなったりするのがフランス大学院受験の変なところである。
推薦書
多くの大学で2通の推薦書が必要になると思う。私の場合は、UTCへの出願で「以前自分が通っていた大学のコースの指導教官」という縛りがあったので、大学院の時の研究室の教授と、メンターにお願いした。Mon masterでの応募期間を直前まで把握していなかったため出願期限の3週間前くらいにお願いすることになってしまった。どうにかなったが1ヶ月、2ヶ月前には依頼したほうがいいと思う。一応下記ページを参考に、「推薦書に入れてほしいネタ」をこちらで考えてお願いしたのだがスムーズに進める点で良かったと思う。
アプライ
さて、書類が準備できたらMon masterや大学ごとのプラットフォームで応募しよう。
結果発表
M1応募の結果は6月頭に出るが、M2編入の場合は大体の大学が応募後二ヶ月以内に連絡となっていると思う。M1応募と違い、結果がいつ来るかわからないので非常にヤキモキすることになる。ちなみにパリサクレーは応募後3週間、IP Parisの場合は応募後、1ヶ月と1週間くらいで不合格の連絡が来た。私は書類審査が終わったら絶対に面接があるものだとと思い、応募して時間が経った後も全然面接の連絡が来ないので、全落ちしたと思い込んでいた。しかし、6月2日にMonmasterで結果を見ると、UTCの入学許可が降りており合格を知った。
感想
以上長くなったが受験体験記である。フランスの大学院受験はネット上にあまり情報が多くなく、ホームページを見ても良くわからないことが多いので、なにか迷ったらすぐに大学に問い合わせるのが大事だと思う。ちゃんと聞いたら丁寧に答えてくれる印象である。また、面接なしで書類審査だけで応募できる大学も多いため(日本から応募する場合は必ずCampus Franceで面接を受ける必要があるが)、ある意味受験しやすいとも思う。
前述したとおり、私の場合は本当に成績が悪く、語学スコアもあまり良くない状態でもどうにかなったため、とりあえずアプライしてみる価値はあると思う。また、フランスで正社員として仕事を得ようと思った場合、いきなり現地企業に応募するという手もあるが、かなり厳しいと思うのでフランス就職を目指して大学院に一旦応募するというのは悪くない方法なのではと思う(まぁまだ職どころか大学院にちゃんと入学卒業できるのかすらめちゃくちゃ怪しい段階なんですが・・・)。
何かわからないことや相談等あれば、ブログの右下の連絡先から問い合わせいただければ可能な限り答えます。
番外編:セカンドプランとしての42
これは大学院の応募とは直接関係ないのだが、私の場合GPAもしょぼいし、語学スコアもあんまりだったのでアプライした全ての大学院に落ちる可能性が高かった。
そこで、全ての大学院に落ちた場合のセカンドプランとしてパリにある42というプログラミングスクールに通うことを考えていた。42はフランス発祥の学費無料のプログラミングスクールで、経歴関係なく誰でも応募することができる。
Piscineという一ヶ月間にわたるかなりハードな試験があり、Piscineに合格すると入学できる。42から現地のIT企業に就職という流れはかなりあるらしく外国からフランスのソフトウェア業界に食い込みたい私のような人間には結構アツい選択肢であった。また、これは不確定情報なのだが、以下の42のFAQによると、42に入学することで長期学生ビザを発行するための登録書が発行されるらしく、パリで働きながら42に通って現地就職を狙うという方法がワンチャンありそう。(本当にビザが発行されるかはCampus Franceや大使館に要確認)
しかし、そんな激熱のプログラミングスクールが故に、そもそもPiscineを受けるための登録自体が早いもの勝ちでめちゃくちゃ熾烈という欠点がある。私の場合、3月のPiscineを受けるために12月から動き出したのだが、既に枠が埋まっており登録できなかった。結局夏のPiscineに延期することになってしまった。もし42に興味がある人は、次の公式HPから次のPiscineを確認して遅くともPisicneの半年前からは動くことをオススメする。