善悪の彼岸

ノリと勢いでフランスに来たエンジニアが個人開発や面白かった本、フランス生活について書くブログ。週2更新(なるべく)。

人生を棒に振りたい時にオススメの本3選

さて、私は現在33歳でフランスの大学院(修士)に通っており、必要最低限のフランス語しかできないせいで現地で地獄を見ている。

 

 

大学院を卒業し、苦労して入った企業を5年で辞め、無職で夫婦共々フランスに渡ってくるというムーブは、我ながらかなりイカれていると思うが、今のところそこまで大きな後悔はない(物凄く準備不足であったことは後悔しています!!)。

むしろ会社で働いていたときに、PCで海外大学院について情報を集め、「いつか行ってみたいなぁ。けど俺のゴミ成績と語学力じゃ、まぁ無理だな」とウジウジしていた頃に比べると幾分か精神的に健康であると思う。

 

しかし、実際、会社を辞めると伝えたときはかなり緊張した。人生真っ逆さまという気持ちである。私の場合、まだ大学の入試すら始まっていない状態だったので、周りの人達にもめっちゃ心配された。え?行く先確定してないのに辞めるの?大丈夫?と。非常に真っ当なご指摘である(今考えても本当にアホ)。ただ、私としては「挑戦するならそろそろやらないとヤバい」という気持ちがあり、勢いで会社を辞めてしまった。今回はそういう「愚かかもしれないけど、何かやりたい!」という時に背中を押してくれる本を三冊紹介しようと思う。

 

 

岡本太郎「自分の運命に盾をつけ」

一冊目は芸術家 岡本太郎の「自分の運命に楯を突け」という本である。

 

この本については以前ブログで書いている。

 

chamekichi.hatenadiary.jp

 

この本で好きなところは失敗を肯定的に捉えていることである。むしろ、積極的に失敗しにいった方が人生は豊かになると説いている。

人の目を意識するのは、自分自身のなかにコンプレックスがあることが多い。そのコンプレックスが〝人の目〟になっているんだ。  そういうときは、自分のケチくさいコンプレックスを、コンプレックスとしてはっきり見据えるようにすればいい。切り捨ててしまえばいいんだよ。自分はこうやると失敗するかもしれない。それなら失敗したらおもしろいじゃないかと思って、失敗のほうに自分の運命を賭けてみるんだ。

岡本 太郎. 自分の運命に楯を突け (p.14). 株式会社 青春出版社. Kindle 版. 

この世の中はつまらないことばっかりだよ。だから、失敗することのほうが素晴らしいんだと思って人生に賭ければ自分はふくらむし、人の目なんてまったく気にしなくなるから安心しろと言いたいね。

岡本 太郎. 自分の運命に楯を突け (p.15). 株式会社 青春出版社. Kindle 版. 

 

人によく思われようとか、ホメられようと思うから人の目が気になる。それは自分の目だ。人に好かれることなど問題にしないで自分のやるべきことをやれば、自分が燃えあがるんだよ。

岡本 太郎. 自分の運命に楯を突け (p.15). 株式会社 青春出版社. Kindle 版. 

 

読んでいると、360度全方位から岡本太郎に怒鳴られているような気分になる。とにかく元気になる本で、今も精神的にへこたれてきたり弱くなってくると読み返すようにしている。何かやりたい!けど他人の目が気になって踏み出せない、という時にオススメの一冊である。

 

 

ショーペンハウアー「幸福について」

 

ドイツの哲学者ショーペンハウアーが、幸福とは何か?私達は幸福のために生きるべきか?ということについて書いた本である。私は大学院の一年生だった時に哲学好きの先輩に勧められて読んだ。私が哲学書を読むきっかけとなった本である。

 

「人は幸福になるために生きている」という考えは人間生来の迷妄であると断じる幸福論。自分を他人と比較し、他人の評価をたえず気にすることが不幸の元凶であり、名誉、地位、財産、他人の評価に惑わされず、自分自身が本来そなえているものを育むことが幸せへの第一の鍵である説く。

幸福について - 光文社古典新訳文庫

 

読んだのが昔過ぎて正直あまり内容は覚えていないのだが、20代、30代、40代、50代と年を重ねるにつれて人間がどういう風に考えが変わっていくのか、ということがかなり精密に描かれていたのを覚えている。人生のグランドデザインというか、この年齢でこういう事をやっておきたいということを考えるのにとても参考になる本だと思う。また、哲学書ではあるがかなり読みやすく、テーマも普遍的な内容を取り扱っているため全く哲学書を読んだことがない人にオススメである。自分もこの本から哲学書を読み始めたので。

 

 

kindle unlimitedに入っている場合は、無料で読める。

 

 

山口周「人生の経営戦略」

この本は最近読んだのだがとても良かった。経営学の概念が、人生のプランニングに役に立つのではないか?という仮説のもとに色々な経営理論の紹介と、それらの人生プランへの当てはめ方を提案している本である。

山口周さんが数多くの哲学書社会学の本を読まれていることもあり、上記で紹介した「自分の運命に楯を突け」や「幸福について」で語られているようなことに経営学認知心理学的な観点からエビデンスを付与するような本である。

 

特に製品のライフ・サイクル・カーブを人生に当てはめて、人生には4つのステージがあり、それぞれ春、夏、秋、冬に例えられるという記述が面白かった。

 

前節では「私たちはいつ死ぬかわからない」と指摘しましたが、とはいえ、現在の日本を前提にすれば、私たちは平均で80歳+まで生きることになります。ということで、ここでは平均的な寿命を、いったん80歳+とおいて、先述したライフ・サイクル・カーブの概念に当てはめてみましょう。すると、おおよそ人生を次の4つのステージに整理できることがわかります。

山口 周. 人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20 (p.72). ダイヤモンド社. Kindle 版. 

 

その中で一見不合理に思える選択も、長期的な視点に立ってみればむしろ合理的であると述べている部分も個人的に同意である。

 

優れた戦略とはしばしば「短期的に見ると不合理に見えるのに、長期的に見ると合理的」であり「部分で見ると不合理に見えるのに、全体で見ると合理的」なわけですが、これは人生の戦略についても同様に言えることなのです。

山口 周. 人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20 (p.83). ダイヤモンド社. Kindle 版. 

 

私がフランスに来たのも長期的に見ればメリットがあると考えたからである。今やろうとしていることが、自分の人生のステージや、将来を考えた時にどういう影響を及ぼす可能性があるか?ということを考えるきっかけになる本だと思う。

 

また、自分の人生を改善することにおいて大切なのは、能力よりも「立地」であるということを山口さんは述べている。

 

多くの人は、自分の状況を改善させようというとき、短兵急にスキルや知識を身につけること……本書の用語を用いれば「人的資本を補強する」というアプローチをすぐに考えてしまいがちですが、私たちは、全く別のアプローチとして「立地や環境を変える」というオプションを常に持っている、ということを忘れてはなりません。

山口 周. 人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20 (p.137). ダイヤモンド社. Kindle 版. 

 

ここらへんも同意である。私自身、一時的にではあるが日本からフランスに立地を変えたことによってポジティブな影響はあった。例えば、日本ではなくフランスの大学院に進学したことにより、より専門に特化し実践を重視した授業を受けられていると感じること、学費が安いこと、色々な国の全く違う背景をもった人たちと関われることなどである。なんとなく自分が感じていたことが体系化かつ言語化されており、個人的に非常にオススメの本である。