フランスに来て驚いたのが、フランス人はめちゃくちゃ映画を見るということである。(パリは人口あたりの映画館の数が世界一らしい。)そして邦画もかなり見られている。特にジブリ映画は今も毎週のように映画館で上映されている。自分の周りでもそこら辺のおばさんが日本人の私ですら知らない邦画を好きだという。大学で仲良くなったフランス人の友だちも大体映画大好きで、日本のこの監督の映画が好きだという話をしてくれる。私もかなり映画好きだと自分で思っていたため、全く知らない邦画を紹介されると驚く。というわけで最近彼らに影響を受け、今まで見たことがなかった日本映画を見るのに少しハマっている。フランスに来たんだからフランス映画を見ればいいんだけど、むしろ日本文化を見直している。最近見た映画は以下の二本。
ヴィタール

最近読んでいるメタルギアの小島秀夫監督が影響を受けた映画についての本で激推しされていて気になって見てみた。
交通事故にあって記憶喪失になった男が、なにかに急き立てられるように医者を志して医大に入る。そこで、解剖実習を行うことになるのだが、人を解剖している最中だけ過去の記憶が再生されるという話。監督の塚本晋也さんは、「鉄男」という体がサイボーグに変わっていく男を描いた作品が海外で有名らしい(見たことないけど)。もう常にシーンが暗く、鬱々としているのだがストーリーが面白かったので最後まで見れた。90年代~00年代あたりの映画によくあるオドロオドロしたオカルトチックな雰囲気は個人的にとても好きである(平成ガメラとか回路とか)。エンディングもCoccoだし。人が死ぬとはどういうことか?死んだらどうなるのか?魂はどこにいるのか?みたいなテーマが主人公の解剖実習とともに、あまり押し付けがましくなく静かに進行していくのが良かった。不気味な雰囲気から一転、見終わると謎にスッキリした気持ちになれるのでオススメ。
ソナチネ

北野武監督が世界的に有名になったキッカケの作品。
最近Xでバズっていた。
このソナチネのコメント好きすぎる。 pic.twitter.com/kLzWzeV8TY
— 面白ツイート図鑑 (@snsnokyoufu) 2026年1月6日
私は結構ヤクザ映画が好きで、特に「孤狼の血」が好きである。北野武監督が何本もヤクザ映画を撮っていたのは知っていたが、一本も見たことがなかったので一番評判が良いソナチネから見てみた。(ソナチネではなくソラチネだと思っていた)
Xでの評判通りとてもいい映画だった。常に目の前の人物が銃でぶっ殺されるかもしれないという緊張感が漂っている。なので、時々挟み込まれるギャグでホッとして笑ってしまう(まぁその直後に殺されたりするわけだが)。非常にシビアで殺る殺られるの世界を描いているのと対象的に、舞台となる沖縄の風景がとても美しく、浜辺で相撲をして遊ぶヤクザたちのシーンがとても良かった。死が隣り合わせだからこそ生が輝くというか。
劇中かなりの人数が殺されるが、ニュースになったり警察が出張ってくるみたいなシーンがないのも良かった。下手に大仰に受け止めるのではなく、自分を侮辱したから、相手が失敗したから、という理由で眼の前の人間を殺す。めちゃくちゃだけど、道理がシンプルで謎にすっきりした気持ちになるのである。何故かわからないけど神々しい雰囲気まである。あと久石譲の音楽がとても良い。基本的に無音なのだが、ここぞという時に音楽が再生されて美しさが際立っていた。
以下は共通の感想。
時間あたりにどれだけ刺激をぶち込むか?飽きさせないか?という最近の思想と対極の映像表現
どちらの映画もセリフは少なく静かに時間が進んでいく。ただ、無駄なシーンなのか?というとちゃんと全て意味のあるシーンであるような気がする。私が今まで見てきた映画の多くはエンタメ作品で、単位時間あたりにどれだけ刺激を入れられるか?ストーリー展開で如何に観客を驚かせられるか?に主軸が置かれているものが多かった。そしてその傾向は映像技術やAIの発展と共に加速している気がする。常に観客を飽きさせないために、次の展開、面白い映像を観客にぶち込んでいく。そういうジャンキーな作品もそれはそれで大好きなのだが、ソラチネやヴィタールのような静かで、フィクションでありつつ、一般的な生活の描写から出すぎず、シンプルなシーンを一つずつ重ねていく映画もそれはそれで面白いんだという発見があった。ただただ人間の行動を映像にするのって面白いんだなぁ。多分その裏には狂気的なこだわりがあるんだろうけど。どちらの作品もAIには作れない感じがする。
どう受け取ったのか?何を考えたのか?を自分で組み立てる必要があるのが面白い
ヴィタールもソラチネもセリフが多くなく、説明もほぼない。よって、映像が何を表しているか?自分が何を感じたのか?を自分で組み立てる必要がある。ある意味観客に優しくないとも言えるが。しかし、だからこそこうやって感想を書きたくなるし、他の人の感想が気になるのかもしれない。よく分からんけど凄いものを見た!という感覚がある。考える余白があるって大事なんだなぁ。他にも色んな作品を見てみたい。
