善悪の彼岸

ノリと勢いでフランスに来たエンジニアが個人開発や好きな哲学、フランス生活について書くブログ。

"親切である"圧力を感じるフランス

1月1日に引っ越しをし、パリの中心部からパリ郊外に移ってきた。俗にボンリューと呼ばれる地域である。多分日本で言えば埼玉とか神奈川あたりだと思う。パリ中心から電車で45分くらい南に下ったところである。

 

パリと違い、一軒家が多くその一軒一軒がとても大きい。今住んでいるお家もかなり広く、元々家族で住んでいたが、娘の部屋が余ったので貸し出しているとのこと。Airbnbで見つけて、一度ヨーロッパの田舎に住んでみるのもいいなぁと思い1ヶ月貸してもらうことにした。

 

部屋からの眺め。手前には卓球台とサッカーゴールがあり、奥にはプールがあり、夏は入れるらしい。なかなか見たことないくらいの立派なお家である。

家では1匹猫を飼っており、私たちの部屋にも毎日遊びに来る。自由に外を出入りすることも許されており、羨ましい暮らしぶりである。さすがフランス、ペットの自由まで担保されている。。。夏になると、餌をもらえる朝だけ帰ってきて、あとはずっと外にいるらしい。なんて自由なんだ。。。

借してもらっているお家で飼われている猫、エルフィー。

お家を貸してくれた方もとても親切で、Airbnb使ってよかったなと思っている。今日はこの親切さについて書いてみたい。

 

コネ社会、フランス

フランスに来て、何かを誰かに頼んだり、交渉したりする機会がとても増えた。主には家探しである。パリではフランス人であっても家を探すのが難しいらしい。ましてや大して貯金もなく、収入も少ない外国人がアパートを探すのは更に難しい。一応不動産を探すサイトはあるが、フランスでの所得証明を提出する段階で詰み、システムで蹴られる。じゃあどうするかというと、日本人オーナーが日本人向けに貸し出している物件を探すか、日本人が好きなフランス人オーナーに貸してもらうか?ということになる。だいたいそういう場合は、中間業者を挟まず、対個人で契約を結ぶことになるので、如何に自分たちを信頼してもらうか、ということをアピールする必要がある。

 

親切でなければならないフランス

こういう個人個人の交渉やアピールがあらゆる場面で求められる。例えば、私は年末10日間ほど別の家を借りていたのだが、これも、私の奥さんの友達の友達がバカンスに行くのでその間、家を貸しても良いと言ってくれて、滞在させてもらった。ホテルに滞在するよりもとても安く済み、非常に助かった。これも「まあこいつが紹介する友達だったら大丈夫だろう」という信頼の下で行われていることである。このように、生活の上である意味"得"をするためにも、「周りからヤバいやつだと思われない」ことがとても大切であると感じる。そして、いざというときに助けてもらうためには、普段から周りの人に親切にしておくことも大事である。フランスに来て、みんな親切だなぁと思うが、こういう社会からの「親切圧」的なものもあるのかもしれない。

 

正直、個人的にはあまり知らない人と関わるのが得意ではないので、完全にシステム化されてる日本がいいなぁと思うことも多い。何をするにも交渉があったり、ちょっとした会話が発生するのでだるいというのも確かである。

 

モラルがあることを前提に合理化されたシステム

しかし、皆が親切である(モラルがある)ことを前提にすることによって、合理化されている部分もあるなぁと感じる。例えば、駅でのバリアフリーについてである。パリの駅は大体がとても古く、中心部の駅でない限りエスカレーターも多くない。バリアフリー的に見たら最悪のレベルだと思う。そうすると重い荷物を持っている人や高齢の方が困るじゃん!と思うが、人の助け合いでどうにかなっている感じがある。困っている人はすぐに他の人に助けを求めるし、頼まれた側もすぐに助ける。私も何回もベビーカーを階段から降ろしたり、おばあさんが引いている日用品の入ったカートを運ぶのを手伝ったりしたことがある。岸田奈美さんという方が車いすでパリを移動したときのエピソードをインスタに投稿していたが、あんな感じである。駅が完全にバリアフリー化されているのがもちろん理想だと思うが、莫大な工事費もかかるだろうし、まぁ皆助けあいでどうにかなるっしょ!という運営側の開き直りが見える。

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また、以前私が旅行したときに使ったBlaBlaCarも性善説で成り立っているシステムである。

タクシーであれば、ある地点からある地点に乗客を運ぶために運転手が車で迎えに来てくれるわけだが、BlaBlaCarの場合、元々ある都市から別の都市に車で行く予定がある人が、同じ場所に行きたいユーザをついでに乗せていってくれるのだ。ヒッチハイクをオンラインで予約するようなイメージだ。

 

BlaBlaCarは上記の記事で紹介した通り、オンラインヒッチハイクのシステムなのだが、「もしヤバイ人の車に乗っちゃったらそのまま誘拐されるのでは?」とか「整備がちゃんとされてるかわからない個人の車をサービスに使って大丈夫?」とか正直、システムとしての抜けはありそうである。それは承知の上で、「お互いヤバイことはしないはず」という個人のモラルを信じて運用されているシステムだと思う。実際、めちゃくちゃ安く都市間を移動できるし、運転手からすると移動のついでに人を乗せただけでお金がもらえるので、ユーザーと運転手双方にWinWinなシステムになっていると思う。

 

紹介した以外でも、TGVに乗るのに改札がなく、そのまま素通りできる等、ユーザのモラルを頼ってシステム側を簡素にするということがフランスではよく見られる。これによって、システム側で余分な制限をかけるコストを省けたり、BlaBlaCarのようなWinWinなシステムを構築できるのは確かだとは思う。

 

おそらくこのモラルが高い状態を作り出してるのが、以前書いたような無料で使える図書館や美術館や博物館の充実だったり、高等教育まで授業費が無料な事なんだろうな。

 

https://chamekichi.hatenadiary.jp/entry/2024/11/12/234011

 

まぁこのモラルを保ち続けるのが今のグローバル社会でいつまでできるのか?という話はあると思うが。