世の中では長く、深く集中することが善とされているし推奨されているように思える。私も集中力自体は大事だと思っているのだが、もっと大事なのは短い時間でも打ち込むこと(没頭すること)なんじゃないかと最近思っている。
最近、読んだ「自意識(アイデンティティ)と創り出す思考」の中にもこんな一節があった。
しかし、フォーカスが自分自身にではなく創作物に向いていれば、創作に打ち込むことが可能になる。よい日にも悪い日にも中くらいの日にも、集中して打ち込むことができる。不満足な日にも、ハッピーじゃない日にも、インスピレーションが湧かない日にも、打ち込むことができる。たいていの人にとってより重要なのは、満足することよりも、打ち込むことなのだ。
ロバート・フリッツ; ウェイン・S・アンダーセン. 自意識(アイデンティティ)と創り出す思考 (p.166). Kindle 版.
今日は集中力について書いてみたいと思う。
イーロンマスクの集中の法則
世界一生産性が高く(いなければならず)、集中することが求められる人物がイーロンマスクだと思う。彼はX,SpaceX,テスラ等、一つ一つが凄まじい規模の会社をいくつも同時に経営している。果たしてどうしたらそんなことが可能なのか。彼の生活習慣や集中の方法が書かれた記事をいくつか読んだ。
これらの記事によると、彼には集中の法則というものがあって、ある時間の中では絶対に一つのことしかやらないらしい。その集中を阻害する電話やメールは受けないで、それはそれで別の時間にまとめて処理するそうだ。元々、人間の脳は元々シングルタスクしかできず、マルチタスクをしているように思っても実際には脳内で高速でタスクを切り替えているだけだ、という話を聞いたことがある。そしてその切り替えはタスクスイッチと言われ、非常に脳にとって負荷が高い。イーロンマスクは、このタスクスイッチをなるべく減らすために、同じようなタスクをひとつにまとめる「バッチング」(ソフト開発でいうバッチ処理)というテクニックを使って、なるべく同じ分野のタスクをまとめつつ、最低限のタスクスイッチの切り替えで、ひとつひとつのことに集中するようにしているようだ。
森博嗣がいう「集中力はいらない」
対して、作家の森博嗣は著作「集中力はいらない」の中で、現代の集中力信仰を批判している。
そう考えてくると、「集中」とはすなわち、人間に機械のようになれという意味なのだ。集中力というと聞こえは良いけれど、言い換えれば「機械力」が相応しい。人間らしさを捨てて、脇目も振らず、にこりともせず作業をしなさい、ということである。
また、自分にとっての「集中」について以下のように述べている。
僕にしてみれば、同じことをずっとしているよりも、沢山のことを少しずつでもやれば、その一つ一つについては集中できるし、しかも効率が良い、ということを感覚的に知っていたのである。何故なら、同じことをじっと長時間やらされると、僕はだらだらとしてしまうからだ。大人が「集中しなさい」というとおりにすると、結果的に「集中できない」状態になってしまうのだ。
僕の場合、人よりもたぶん集中の度合いが強い(あるいは深い)から、人よりも長く続けられない。だから、次から次へと目移りする。その方が、僕の頭には自然なのだ。 「集中」は、好奇心が原動力だろうと思われる。面白いから集中する。楽しいから没頭する。子供は素直だから、自分の頭脳が求めるものに集中し、すぐに別のものへ移っていくのである。
これを読むと、森博嗣も「長く、深く」集中するよりも、短い時間でも没頭して、たくさんのことを少しずつ行うことを推奨しているように思える。
結局短い時間、集中するのを毎日継続するのが大事なのでは?
両者の意見をまとめると、やはり短い時間では集中する必要があるが、長期間集中することは別に必要ない。 1日の中で短期間でも没頭している時間を複数持ち、かつタスクスイッチによる脳の負荷を減らすためになるべくタスクをバッチング(まとめる)することが大切そうである。また、それを毎日継続することも大切である。
考えてみれば、もし1時間でもある一つのことに集中することができて、それを7日間続ければ、集中した時間が1週間で7時間とれることになる。 これは、日曜日にだらだらしながら7時間やるのよりも効率も進捗もいいんじゃないかと思う。
番外編:私には合わなかったポモドーロテクニック
ちなみにこういう集中力を保って生産性を上げる方法として、ポモドーロテクニックが有名である。簡単に言うと25分間のタイマーをセットし、その期間中はその作業に集中してその後に5分休憩する、というのを繰り返すという時間管理テクニックである。私も一時期傾倒していてスマートウォッチのストップウォッチ機能を使ってやっていたのだが長く続かなかった。ポモドーロテクニックの最大の弱点は、25分間かけてようやくタスクに没入できたところで強制的に5分間休憩を取らされることである。また、5分と決めていても長く休憩を取ってしまい、いつの間にかスマホを1時間触ってしまうということもあった・・・。人にもよると思うが私には合わなかった。